エメラルドの特徴やその価値について解説

エメラルドは、深い緑色をもつ鮮やかな宝石です。ルビーやサファイアと並んで人気を集めるジュエルとして知られていますが、具体的にどのような価値があるのか、どのような歴史的背景をたどってきたのか知らない人も多いでしょう。そこで今回は、エメラルドの概要やエメラルドが人気な理由について詳しく解説します。

エメラルドの概要と歴史

まず、エメラルドとはどのような宝石かを見ていきましょう。

エメラルドの概要

エメラルドは、ベリルという鉱物の一種です。

ベリルは緑柱石とも呼ばれ、緑色のものをエメラルドと呼びますが、ベリルはほかにもさまざまな色をもつ鉱物です。

たとえば、青色のアクアマリン、赤色のレッドベリル、黄色のイエローベリル、黄緑色のヘリオドール、ゴールドのゴールデンベリル、ピンクのモルガナイト、透明のゴーシェナイトなどがあります。

アクアマリンやモルガナイトもエメラルドと同じベリルの変種であり、色の違いによって名称が変わるのです。このように、エメラルドは多様なベリルのなかでもとくに緑色が際立っています。

エメラルドの歴史

エメラルドは4000年以上の歴史をもちます。

古代バビロニアではすでにエメラルドの取引が行われており、古代ローマでは再生や豊穣の象徴として崇拝されました。また、古代インドではエメラルドが解毒や胃腸の働きを助けるとされ、医療行為にも使用されていました。

エメラルドは裏切り行為に反応して色を変えるともいわれていましたが、実際には色が変わることはありませんでした。しかし、そんな逸話が残るほどに特別な存在と考えられていたのです。たとえば、プトレマイオス朝のクレオパトラはエメラルドを愛し、多くのエメラルドを収集しました。

彼女はエメラルドに自分の顔を彫刻して他国の要人に贈ることもありました。エジプトでのエメラルドの鉱床は1800年代に再発見され、長い間エメラルドが採掘されてきたことがわかります。しかし、エメラルドがヨーロッパやアジアに広がるのは比較的最近です。

1500年代にスペイン人がコロンビアでエメラルドを発見し、それを母国に持ち帰ったことで、エメラルドの存在が広まり、人気を博しました。

エメラルドの価値

エメラルドは古来より美しい宝石として高い価値があり、現在でもその評価は揺るぎません。

とくに四大宝石として知られるダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドのなかでも、エメラルドは特別な地位を占めています。

エメラルドが人気を集める理由

エメラルドの人気は、その美しさに起因しています。

誰が見ても魅了される緑色は、エメラルドの最大の特徴です。この美しさは、エメラルドが長い歴史のなかで愛されてきた理由のひとつです。エメラルドは古代から使用されており、そのため広く知られています。

さらに、エメラルドは5月の誕生石としても有名です。誕生石としての意味や効果が広まっており、5月生まれの人にとっては特別な意味をもつ宝石です。そのため、多くのショップで5月の誕生石エメラルドとしてフェアが行われたり、販促活動が展開されたりします。

このような広がりも、エメラルドの人気の一因です。

有名なエメラルドを紹介

エメラルドは、その美しさと歴史の長さから、世界中で多くの有名なエピソードをもっています。

ここでは、とくに個性的なエピソードをもつエメラルドをいくつか紹介します。

モーグルムガールエメラルド

モーグルムガールエメラルドは、217.8カラットの巨大なサイズを誇り、長方形の板状の形をしています。

このエメラルドの特徴は、両面に細かく彫刻が施されている点です。片面にはアラビア文字でイスラム教シーア派の祈りが刻まれており、もう片面には植物の葉の細かな模様が彫られています。これはコロンビアで採掘された後、インドに渡ったとされています。

彫刻が施されたのは17世紀のムガール帝国時代のアウラングゼーブ皇帝の時代といわれていますが、皇帝自身はイスラム教スンニ派であったため、彫刻の依頼者は別の人物であると考えられています。

バイアエメラルド

バイアエメラルドは、世界最大のエメラルド原石であり、そのサイズは19万カラットと驚異的です。

2011年にブラジルのバイア州、カーナイバ鉱山で発見され、発見当初の価格は4億ドルとされましたが、現在ではさらに高い価値があるとされています。このエメラルドは、その後さまざまな事件に巻き込まれることになります。

採掘者たちはエメラルドをロバで運んでいたところ、パンサーに襲われてロバを失い、エメラルドを自力で運び出さなければならなくなりました。その後、エメラルドは密輸され、裏ルートで取引されることになりました。

さらに、ロサンゼルスで保管中に盗難に遭うなど、多くの事件が発生しました。最終的には、2015年の裁判でFMホールディングスが所有権を得て、現在はアメリカ政府によって保管されています。

チョークエメラルド

チョークエメラルドは、38.4カラットのコロンビア産エメラルドで、その美しさから有名です。

エメラルドは、深く重厚な緑色が特徴的です。長い間インドの王室で愛用されていた後、20世紀にハリー・ウィンストン社の手に渡りました。そして、リカットされて60個のダイヤモンドとともにプラチナとゴールドの台座にセットされたリングに加工されたのです。

このエメラルドの最後の所有者であるチョーク夫妻にちなんでチョークエメラルドと呼ばれるようになり、1972年にアメリカのスミソニアン博物館に寄贈されました。現在もスミソニアン博物館で展示されています。

まとめ

エメラルドはその深緑色と輝きで古代から愛されてきた宝石で、とくに四大宝石として知られるダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドのなかでも特別な存在です。エメラルドはベリル鉱石の一種とされ、4,000年以上の歴史をもっています。古代バビロニアからエジプトのクレオパトラまで、幅広く利用されてきました。有名なエメラルドとしては、繊細な彫刻が施されたモーグルムガールエメラルド、世界最大の原石バイアエメラルド、そしてチョーク夫妻によって形作られたチョークエメラルドがあります。これらのエメラルドは、その美しさと歴史的背景から、今もなお宝石界で輝き続けています。